ジャン＝オーギュスト＝ドミニク・アングルは、19世紀フランスを代表する新古典主義の画家です。
その卓越したデッサン力と、理想化された美の追求は、後世の画家たちに多大な影響を与えました。
特徴
卓越したデッサン力: アングルは、「デッサンは絵画の骨格である」と考え、生涯にわたりデッサンの重要性を説きました。
その正確で滑らかな線描は、彼の作品の最も重要な特徴の一つです。
理想化された美: 古代ギリシア・ローマ美術やルネサンス美術に影響を受け、理想化された人物像や歴史画を多く描きました。
新古典主義: ダヴィッドの弟子として、新古典主義の様式を受け継ぎながらも、独自の美意識を追求しました。
生い立ち
1780年、フランス南部のモンテュバンで、彫刻家で画家でもあった父親のジャン＝マリー＝ジョゼフ・アングルのもとに生まれます。
幼い頃から父親に絵画と音楽の手ほどきを受け、12歳でトゥールーズのアカデミーで本格的に絵画の勉強を始めました。
1797年、パリに出て、新古典主義の巨匠ジャック＝ルイ・ダヴィッドの弟子となりました。
生涯と背景
1801年、ローマ賞を受賞し、ローマ留学の機会を得ました。
イタリアでルネサンス美術を深く学び、ラファエロを崇拝しました。
1820年代には、サロンで高い評価を得て、フランス画壇の重鎮となっていきました。
1834年から1841年まで、ローマのフランス・アカデミーの院長を務めました。
晩年まで制作意欲は衰えず、数々の傑作を生み出しました。
1867年1月14日、パリで死去。
86歳でした。
技法と革新
アングルの技法の核心は、卓越したデッサン力にあります。
彼は、対象の形態を正確に捉え、滑らかな線で表現することに長けていました。
色彩よりも線描を重視し、形態の美しさを追求しました。
古代ギリシア・ローマ美術やルネサンス美術から学び、理想化された美の表現を追求しました。
代表作
「グランド・オダリスク」: 東洋的な異国情緒と、理想化された女性美が融合した傑作です。
「玉座のナポレオン1世」: 皇帝ナポレオンの威厳と権力を象徴的に描いた作品です。
「泉」: 純粋で清らかな裸婦像は、アングルの理想とする美の典型です。
「ド・ブロイ公爵夫人」：アングルの描く肖像画の中で最高傑作の一つと言われています。
影響と評価
アングルの作品は、同時代のロマン主義の画家たちとは対照的に、古典的な美の規範を追求しました。
彼のデッサン力と理想化された美の追求は、後世の画家たちに大きな影響を与えました。
20世紀のピカソなど、多くの画家たちがアングルの作品からインスピレーションを得ています。
現在でも、アングルはフランス絵画史における最も重要な画家の一人として高く評価されています。
アングルの作品は、ルーブル美術館やオルセー美術館など、世界中の美術館で鑑賞することができます。
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