98位 ホルバイン（子）「大使たち」
ハンス・ホルバイン『大使たち』
さまざまな寓意が込められた肖像画
- 絵画の題名 大使たち、外交官たち
- 絵画の作者 ハンス・ホルバイン（ドイツ）
- 美術様式 ドイツ・ルネサンス
- 絵画の制作年 1533年
- 絵画の画材 テンペラ、板
- 絵画の寸法 207cm × 210cm
- 絵画の所蔵 ロンドン・ナショナルギャラリー（イギリス、ロンドン）
父も同名で画家のため「ホルバイン（子）」のように表記されることが多い、
ドイツルネサンス期の画家ハンス・ホルバインの代表作。
イングランド国王ヘンリー8世の命で描かれた肖像画で、
左はフランスから派遣された外交官ジャン・ド・ダントヴィル。
右はその友人で司教のジョルジュ・ド・セルヴ。
イングランド国王ヘンリー8世はイングランドをローマ・カトリックの国から聖公会の国へと変え、イギリスに宗教改革をおこした。
カトリックであったハンス・ホルバインはそんなヘンリー8世への批判を本作に込めている。
・弦の切れたリュート、解体されたフルート、壊れた地球儀：宗教的不和
・ルターの賛美歌集楽譜：新旧協会の調和
ほか、中央下にある奇妙な模様は絵画を横から見るとドクロにみえ、
左上に小さく描かれたキリスト磔刑図とともに「メメント・モリ（死を忘れるなかれ、盛者必衰）」を寓意している。
参考ページ「常識として知っておきたい世界の名画ランキング の記事一覧 知欲」
ハンス・ホルバイン（子）の「大使たち」ですね。
視覚障がいをお持ちの方にもお楽しみいただけるよう、できる限り詳細に解説します。
作品の概要
「大使たち」は、1533年にハンス・ホルバイン（子）によって描かれた絵画です。等身大の二人の男性が描かれており、その周囲には様々な品々が配置されています。
緻密な描写と象徴的な意味合いが込められた、非常に複雑で奥深い作品として知られています。
構図と描かれているもの
中央の人物:画面中央には、二人の男性が並んで立っています。左側の人物は、フランス大使のジャン・ド・ディントヴィルです。
彼は豪華な絹の衣装を身にまとい、威厳のある表情をしています。
右側の人物は、ジョルジュ・ド・セルヴェという司教です。
彼は落ち着いた黒い衣装を身にまとい、知的な雰囲気を漂わせています。
周囲の品々:二人の間には、二段に重ねられた棚があり、様々な品々が置かれています。
上段には、天球儀、日時計、多面体の鏡など、天文学や時間計測に関連する道具が並んでいます。
下段には、地球儀、リュート、賛美歌集、算術書など、学問や音楽に関連する品々が置かれています。
床には、骸骨が斜めに描かれています。
人物の表情と視線:ジャン・ド・ディントヴィルは、鑑賞者の方をまっすぐに見つめており、自信と威厳を感じさせます。
ジョルジュ・ド・セルヴェは、少し横を向いており、思索にふけっているような表情をしています。
人物のヘアスタイルと服装:ジャン・ド・ディントヴィルは、豪華な毛皮のコートを羽織り、精巧な刺繍が施された衣装を身にまとっています。
ジョルジュ・ド・セルヴェは、落ち着いた黒い聖職者の衣装を身にまとっています。
二人の髪型は、当時の流行に合わせたものです。
色彩
ジャン・ド・ディントヴィルの衣装は、鮮やかな赤や緑、金色の装飾が施されており、豪華絢爛です。ジョルジュ・ド・セルヴェの衣装は、黒を基調としており、落ち着いた印象を与えます。
背景は、深みのある緑色で、品々の色彩を引き立てています。
骸骨は、灰色がかった白色で、不気味な雰囲気を醸し出しています。
時代背景と作者の意図
この絵画は、宗教改革の時代に描かれました。ホルバインは、二人の大使の威厳と教養を示すとともに、
人間の知識や富の儚さ、死の必然性といったメッセージを込めたと考えられています。
床に描かれた骸骨は、「メメント・モリ」（死を忘れるな）という、死を意識することで生を意義あるものにするという思想を象徴しています。
作品の評価
「大使たち」は、ホルバインの最高傑作の一つとして高く評価されています。緻密な描写、象徴的な意味合い、そして謎めいた雰囲気は、多くの人々を魅了し続けています。
特に床に描かれた骸骨は、歪んで描かれており、特定の場所から見ることで正しい形に見えるようになっています。
このアナモルフォーズという技法は、作品の複雑さをさらに高めています。
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