73位 エゴン・シーレ「家族」
エゴン・シーレ『家族』
亡くなる直前に描かれた幻想の家族
- 絵画の題名 家族
- 絵画の作者 エゴン・シーレ（オーストリア）
- 美術様式 ウィーン分離派、表現主義
- 絵画の制作年 1918年
- 絵画の画材 油彩、カンヴァス
- 絵画の寸法 152cm × 162cm
- 絵画の所蔵 オーストリア・ギャラリー（オーストリア、ウィーン）
グスタフ・クリムトの弟子として、ウィーン分離派でありながら象徴主義や表現主義などに学び独自の画風を若くして確立したエゴン・シーレ。
28歳の若さでこの世を去った天才が遺した『家族』の肖像画本作。
描かれている女性は妻エーディトでスペイン風邪により亡くなった。
エゴン・シーレ自身もその3日後に同じくスペイン風邪で亡くなる。
描かれている赤子は、そのとき母の胎内におり生まれてくることがなかった。
第一次世界大戦の従軍の後、意欲的に作品を多く描き成功した画家となった直後のできごとであった。
本作は生まれ来る前の退治を生まれ来た我が子として描いた家族の肖像画で、エゴン・シーレが最後に描いた作品とみられている。
参考ページ「常識として知っておきたい世界の名画ランキング の記事一覧 知欲」
作品の概要
エゴン・シーレの「家族」ですね。
視覚障がいをお持ちの方にもイメージしやすいよう、できる限り詳細に解説します。
作品の紹介
この作品は、エゴン・シーレが1918年に描いた油彩画で、彼の最晩年の代表作です。
シーレ自身と妻のエディット、そして生まれてくるはずだった子供の3人が描かれています。
シーレの作品としては珍しく、穏やかで愛情に満ちた雰囲気が漂っています。
しかし、この作品が描かれた年にシーレ夫妻はスペイン風邪で相次いで亡くなり、この絵は彼らの叶わぬ願いを象徴するものとなりました。
構図と人物描写
画面中央に、シーレとエディットが寄り添うように座っています。
二人の間には、まだ見ぬ子供の存在が暗示されています。
シーレは、ややうつむき加減で、静かに妻を見つめています。
エディットは、穏やかな表情で、少し微笑んでいるようにも見えます。
二人の視線は、未来への希望を見つめているようです。
シーレのヘアスタイルは短く整えられており、エディットは髪をまとめています。
二人のポーズは、寄り添い、抱擁している様で、親密さを感じられます。
色彩
全体的に、茶色やベージュなど、落ち着いた色調でまとめられています。
シーレの服は、暗い茶色で、エディットの服は、明るいベージュです。
二人の肌の色は、やや赤みを帯びた、生気のある色で描かれています。
背景は、ぼんやりとしており、二人の姿を際立たせています。
時代背景と作者の意図
1918年、第一次世界大戦末期、ヨーロッパはスペイン風邪の流行に苦しんでいました。
シーレ自身も、戦争と病気の恐怖の中で、家族への愛情と未来への希望を強く抱いていたと考えられます。
この作品は、彼が家族との幸せな未来を願って描いた、いわば遺言のようなものと言えるでしょう。
作品の評価
「家族」は、シーレの作品の中でも、特に高い評価を受けています。
彼の作品に多く見られる、不安やエロティシズムといった要素が薄く、代わりに穏やかで愛情に満ちた雰囲気が強く表れています。
しかし、その背景には、戦争と病気という暗い影が潜んでおり、見る人の心を深く揺さぶります。
この作品は、シーレの人間性と芸術性の両面を理解する上で、非常に重要な作品と言えるでしょう。
補足・シーレは、クリムトの弟子であり、ウィーン分離派の画家として活躍しました。
彼の作品は、独特の線描と、人間の内面を深く掘り下げる表現が特徴です。
シーレの作品は、現在も世界中の美術館で展示されており、多くの人々を魅了しています。
この解説が、作品への理解を深める一助となれば幸いです。
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