58位 クラムスコイ「忘れえぬ人」
イワン・ニコラーイェヴィチ・クラムスコイ『忘れえぬ人』
ロシアのモナ・リザ
- 絵画の題名 忘れえぬ人
- 絵画の作者 イワン・ニコラーイェヴィチ・クラムスコイ（ロシア）
- 美術様式 ロシア・写実主義
- 絵画の制作年 1883年
- 絵画の画材 油彩、カンヴァス
- 絵画の寸法 75.7cm × 99cm
- 絵画の所蔵 トレチャコフ美術館蔵（ロシア、モスクワ）
通称「ロシアのモナリザ」
ロシアで最も有名な作品のひとつ。
かつての「モナ・リザ」と同じようにモデルが誰であるのか不明。
参考ページ「常識として知っておきたい世界の名画ランキング の記事一覧 知欲」
作品の概要
クラムスコイの「忘れえぬ人」は、19世紀ロシアの画家イヴァン・クラムスコイによって描かれた、謎めいた女性の肖像画です。
視覚障がいをお持ちの方にもイメージしやすいよう、作品の詳細を解説します。
構図:
絵の中央に、黒いコートを着た若い女性が描かれています。
彼女は、サンクトペテルブルクの有名な並木道であるネフスキー大通りを、馬車に乗って移動している様子が描かれています。
背景には、アンチコフ橋と、その上に立つ馬の彫刻がわずかに見えます。
女性は、鑑賞者に向かって正面を向き、堂々とした態度でこちらを見つめています。
表情:女性の表情は、冷たく、それでいてどこか謎めいた雰囲気を漂わせています。
彼女の視線は、鑑賞者を射抜くようにまっすぐ向けられており、見る者に強い印象を与えます。
その表情は、高慢、憂鬱、知性、そしてわずかな挑戦といった様々な感情が混ざり合っているように見えます。
ヘアスタイル:女性は、当時の流行であった高いヘアスタイルをしています。
頭には、リボンと羽飾りで飾られた黒い帽子をかぶっています。
服装:女性は、豪華な黒い毛皮のコートを着ています。
コートは、青いリボンで飾られています。
手袋をはめた両手を胸の前で組んでいます。
色彩
絵全体は、暗く、落ち着いた色調で描かれています。
女性の黒いコートと帽子が、画面の中で強い存在感を放っています。
彼女の白い肌と、わずかに赤みを帯びた頬が、暗い背景の中で際立っています。
背景の建物の色は、暗い茶色や灰色です。
時代背景
19世紀後半のロシアは、社会が大きく変動していた時代でした。
貴族階級の没落と、新興の資本家階級の台頭が起こっていました。
この作品の女性は、そのような社会の変化の中で現れた、新しいタイプの女性像を表していると考えられています。
作者の意図
クラムスコイは、この絵の女性のモデルについて、何も語りませんでした。
そのため、彼女が誰であったのか、どのような人物であったのかは、今も謎に包まれています。
しかし、彼女の謎めいた美しさと、強い意志を感じさせる表情は、多くの人々を魅了し続けています。
作者は、特定の人物を描くというよりも、当時の社会の雰囲気を象徴するような、普遍的な女性像を描こうとしたのかもしれません。
作品の評価
「忘れえぬ人」は、クラムスコイの代表作の一つとして、高く評価されています。
その謎めいた雰囲気と、卓越した描写力は、多くの人々を魅了し、さまざまな解釈を生み出してきました。
この絵は、ロシア美術の傑作として、世界中の美術館で展示されています。
補足：この絵の女性については、さまざまな憶測がなされています。
貴族の未亡人、高級娼婦、あるいは作者の理想の女性など、さまざまな説があります。
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