53位 ゴヤ「我が子を食らうサトゥルヌス」
フランシスコ・デ・ゴヤ『我が子を食らうサトゥルヌス』
神話を借りて人間の残虐性を描いた「黒い絵」シリーズの名画
- 絵画の題名 我が子を食らうサトゥルヌス
- 絵画の作者 フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス（スペイン）
- 美術様式 ロマン主義
- 絵画の制作年 1819年?823年
- 絵画の画材 油彩、カンヴァス
- 絵画の寸法 146cm × 83cm
- 絵画の所蔵 プラド美術館蔵（スペイン、マドリード）
衝撃的なこの作品は、ローマ神話の一場面である、ルーベンスも同じ主題で描いている。
農耕神サトゥルヌス（クロノス）は将来自分の子に殺されるという予言を恐れ、狂気に取り憑かれ5人の我が子を丸呑みにした。
本作では丸呑みではなく頭を囓るというさらなる凶行に及んでいる様子を描く。
本作は当初サトゥルヌスの陰茎を勃起させて描いていたが、後に修正された。
参考ページ「常識として知っておきたい世界の名画ランキング の記事一覧 知欲」
作品の説明
フランシスコ・デ・ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」ですね。
視覚障がいをお持ちの方にも分かりやすいよう、詳しく解説します。
作品の概要
この絵は、ローマ神話に登場する農耕神サトゥルヌス（ギリシア神話のクロノス）が、
自分の子供を食べてしまうという恐ろしい場面を描いたものです。
ゴヤが晩年に自宅の壁に描いた「黒い絵」と呼ばれる連作の一つで、
彼の内面の苦悩や狂気が色濃く反映されています。
構図:
画面全体は暗く、サトゥルヌスが中央に大きく描かれています。
彼は、まるで獲物を捕食する獣のように、生きた子供の体の一部を口にしています。
子供の体は、既に一部が食いちぎられ、無残な姿をさらしています。
サトゥルヌスの目は大きく見開かれ、狂気と恐怖が入り混じったような表情をしています。
表情・ヘアスタイル・視線:
サトゥルヌスの表情は、恐怖と狂気に満ちています。
彼の目は大きく見開かれ、視線は見るものを射抜くように、または一点を見つめているような印象を与えます。
髪は乱れ、髭は伸び放題で、彼の狂気を際立たせています。
色彩:
画面全体は、黒や茶色などの暗い色調で統一されています。
サトゥルヌスの体は灰色がかった白色で描かれ、その異様な姿を際立たせています。
子供の体は青白い色で描かれ、その死を予感させます。
背景の暗闇と、サトゥルヌスの体の明るさのコントラストが、恐怖感を強調しています。
時代背景と作者の意図
この絵が描かれた19世紀初頭のスペインは、政治的にも社会的に不安定な時代でした。
ゴヤ自身も、病気や聴覚の喪失、そして戦争による精神的な苦痛を抱えていました。
この作品は、そうした時代の不安やゴヤ自身の苦悩が、神話の世界を借りて表現されたものと考えられています。
また、この作品は、人間の狂気や暴力性、そして時間の残酷さを象徴しているとも解釈されています。
作品の評価
「我が子を食らうサトゥルヌス」は、ゴヤの最高傑作の一つとして高く評価されています。
その強烈な表現と、人間の暗部を抉り出すようなテーマは、見る者に深い衝撃を与えます。
この作品は、後の芸術家たちにも大きな影響を与え、多くの作品にインスピレーションを与えました。
この絵は、視覚に障がいがある方だけでなく、すべての人に、人間の心の奥底にある闇を感じさせる作品です。
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