35位 ダヴィッド「サン・ベルナール峠を越えるナポレオン」 ジャック=ルイ・ダヴィッド『サン・ベルナール峠を越えるナポレオン』 英雄の虚構の場面を描いたプロパガンダ絵画
- 絵画の題名 サン・ベルナール峠を越えるナポレオン
- 絵画の作者 ジャック=ルイ・ダヴィッド(フランス)
- 美術様式 新古典主義
- 絵画の制作年 1801年
- 絵画の画材 油彩、カンヴァス
- 絵画の寸法 271cm × 232cm
- 絵画の所蔵 ヴェルサイユ宮殿美術館(フランス、ヴェルサイユ)
ナポレオンの第二次イタリア遠征でアルプスのサン・ベルナール峠を超えるナポレオンの姿を理想化して描いたプロパガンダ絵画。 実際には防寒具にくるまりロバでアルプス越えをおこなった。 画面左下の石には、かつてアルプス越えをおこなった英雄のハンニバルとカール大帝の名が刻まれ、ナポレオンを偉大な英雄と並ぶ者とする意図がみられる。
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作品の概要
★以下に、ジャック=ルイ・ダヴィッド作「サン・ベルナール峠を越えるナポレオン」の詳しい説明を記載します。
1. 視覚的な説明と構図
この絵画はナポレオン・ボナパルトがサン・ベルナール峠を馬で越える姿を英雄的に描いたものです。
構図・ 中央:ナポレオンと馬
ナポレオンは画面中央の馬にまたがり、右腕を斜め上に高く掲げています。
このジェスチャーは「先導者」としての象徴であり、英雄的なポーズを強調しています。
馬は後ろ脚を地面につけ、前脚を高く上げた躍動感ある姿勢で描かれています。
ナポレオンの視線は前方遠くを見据えており、冷静さと決意を感じさせます。
背景:山岳地帯
背景には険しい山々が描かれており、荒々しい自然の力を象徴しています。
風が強く吹いている様子が岩肌やナポレオンのマントの翻りで感じられます。
細部:刻まれた名前
馬の足元の岩には「BONAPARTE」(ボナパルト)や、ナポレオンに先立ってサン・ベルナール峠を越えた、
歴史的な英雄たち(例えばハンニバル)の名前が彫られています。
ナポレオンの姿
表情:冷静で無表情。動揺や恐れのない自信を漂わせています。
ヘアスタイル:短髪で整えられた髪。風の中でもほとんど乱れていない様子で、象徴的な存在感を示しています。
視線:遠くを見つめ、まっすぐで力強い目線。彼の指導力や目的意識を表現しています。
2. 色彩
全体的にドラマティックな色彩が用いられています。
ナポレオンの衣装
コート:鮮やかな赤色。英雄的な印象を与えます。
ズボン:白色。純粋さや清廉さの象徴。
手袋:白色。上品で統率力の象徴的アイテム。
馬
馬の毛色:白色。力強さと優雅さを象徴。
鞍と装飾:金や茶色が使われ、威厳を強調。
背景の山々
灰色や白の岩肌、薄い青や灰色の空。寒冷で荒々しい環境を描写しています。
全体のトーン
暗い影と明るい部分の強いコントラストで、ドラマチックさが際立ちます。
特にナポレオンが光の中心に位置しており、英雄的なオーラを際立たせています。
3. 時代背景
この絵は1801年から1805年の間に制作されました。
当時、ナポレオンはフランス革命後の混乱を収束させ、第一統領として絶大な権力を握っていました。
この絵画は、ナポレオンの政治的プロパガンダの一環として描かれたものです。
実際には彼はサン・ベルナール峠を馬ではなくラバで越えていますが、
英雄的なイメージを強調するためにこのような劇的な表現が用いられました。
4. 作者の意図
ジャック=ルイ・ダヴィッドは、新古典主義の画家であり、ナポレオンの公式画家として活躍しました。
この作品は、ナポレオンを英雄として神格化し、彼のリーダーシップと勇気を視覚的に表現することを目的としています。
ダヴィッドは過去の偉大な英雄たち(例えばローマの将軍やハンニバル)とナポレオンを重ね合わせる構図を意図的に選びました。
5. 作品の評価
この絵画はナポレオンのプロパガンダ芸術の代表作として高く評価されています。
ダヴィッドの卓越した技術と象徴的表現は、見る者に強い印象を与え、ナポレオンの英雄的なイメージを後世に伝える役割を果たしました。
一方で、実際の出来事と異なる描写が「理想化された歴史」として批判されることもあります。
しかし、その視覚的な力強さと象徴性により、芸術作品としての価値は揺るぎません。
この作品は、新古典主義の頂点に位置するだけでなく、歴史と芸術が交差する一例として美術史において重要な地位を占めています。
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